「で、根拠は?」で固まっていた自分が、意思決定を組み立て直した話

「で、その根拠は?」

会議でそう聞かれた瞬間、頭が真っ白になりました。自分の中では筋が通っているつもりでした。話の流れも見えていた。なのに、いざ問われると「なんとなくそう思ったから」以上のものが、何も出てこない。

しばらく黙ったあと、先輩にこう言われました。

「お前の解釈、事実なのか、思い込みなのか、区別ついてる?」

刺さりました。ビリコンサルを自称していた自分が、いちばん基本的なところで崩れていた。あのときの居心地の悪さが、今の自分の土台になっています。今日は、その一言から始まった「意思決定の組み立て直し」を、できるだけ具体的に書いてみます。

目次

なぜ「根拠は?」で詰まるのか、先に整理する

詰まる原因は、意外とシンプルでした。判断を構成する三つの段階を、一緒くたにして喋っていたからです。

コンサルの現場でよく使われる型に、空・雨・傘という整理があります。

  • 空(事実):「空に黒い雲が出ている」。誰が見ても同じ、客観的な観察。
  • 雨(解釈):「この雲だと雨が降りそうだ」。事実に意味をつけて、何が起きているかを読む段階。
  • 傘(判断):「だから傘を持っていこう」。解釈を受けて、じゃあどうするかを決める段階。

このフレーム自体はシンプルです。でも、自分が崩れていた原因は、真ん中の「雨(解釈)」をほぼ意識せず、事実からいきなり判断に跳んでいたことでした。跳んでいる自覚もなかった。だから根拠を問われると、出してくるものがなかったんです。

自分がやっていた失敗:事実と解釈の境目が見えていなかった

たとえばこういう場面です。「今月の売上が下がった」という話が出たとき、自分はすぐこう言っていました。「営業のやり方が悪いんだと思います」。

これ、事実は最初の一文だけです。「売上が下がった」まで。「営業が悪い」は、そこに自分が乗せた推測です。でも当時の自分には、その境目が見えていなかった。事実のつもりで解釈を喋っていた。だから、問われると崩れる。当たり前でした。

気づいてからやったのは、まずここを丁寧に分けることでした。

  • 事実:今月の売上が下がった。
  • 解釈の候補:営業プロセスに問題があるかもしれない。単価を変えた影響かもしれない。季節要因かもしれない。競合に案件を取られたかもしれない。

解釈はひとつではない。これに気づいたことが、最初の大きな変化でした。「営業が悪い」しか見えていなかったところに、急に複数の可能性が並ぶようになった。それだけで、次に何を調べるべきかが変わります。

解釈を「信頼できる」ものにする二つの作法

解釈の候補が並んだとして、次の問題は「じゃあどれが正しいの」です。ここでやることが二つあります。

作法1:根拠を三つ、別々の角度から探す

ひとつの根拠だと、偶然や思い込みの可能性が残ります。でも、まったく別の角度から見た三つの事実が、同じ方向を指しているとき、その解釈の確からしさは一気に上がります。

「売上が下がったのは、先月から変えた単価設定が原因だ」という解釈を立てたなら、それを支える独立した根拠を三つ探す。同じデータを三通りに読み直すのではなく、別々の情報源や視点から、三つ集める。これが条件です。

実際にやってみると、三つ集められないことが多い。そのとき、「この解釈はまだ弱い」と気づけます。それが重要で、根拠探しは「正しさを証明する作業」ではなく、「解釈の強さを測る作業」です。

作法2:反証を先に探しにいく

こちらのほうが、自分には効果がありました。人は、自分の解釈を支持する情報を無意識に集めてしまいます。見たいものを見て、見たくないものを見ない。これは確証バイアスと呼ばれていますが、名前を知っていても防げない。だから、意識的に逆をやります。

やり方は一つ問いを立てることです。「もしこの解釈が間違っているなら、どんな事実が見えているはずか」。この問いを先に立てて、その事実を実際に探しにいく。

探して見つからなければ、解釈は強い。見つかってしまったら、解釈を疑う。支持する証拠を積むより、否定する証拠を探す。この順番が、自分の判断の精度を一番変えました。

具体的にどう動くか書いておきます。「単価変更が原因」という解釈を持っているなら、「単価変更に関係なく売上が下がっているセグメントはないか」「単価を変えていない商品ラインの売上はどうか」を調べる。反証を「見ないようにする」のではなく、自分から「見にいく」ことが大事です。

判断(傘)は「やる」で終わらせない

解釈が固まったら、最後は傘、つまり行動の判断です。以前の自分はここで「じゃあこうします」で止めていました。でも、それだと実行段階でまた崩れます。判断が「気持ち」で終わっていて、「計画」になっていないからです。

今は、傘を決めるときに四つ確認するようにしています。

  • メリットとデメリットを並べたか。
  • なぜ「今」やるべきなのか、説明できるか。
  • それをやったら、どこに影響が波及するか。
  • 何をもって成功とし、どうなったら引き返すか。

特に最後の「どうなったら引き返すか」を先に言葉にしておくことが、自分には一番効きました。走り出すと、人は引き返せなくなります。損切りの判断が遅れる、方針転換を認めたくない、「ここまでやったんだから」という感情が邪魔をする。だから、動き始める前に撤退ラインを決めておく。これは反証を探す発想と同じです。うまくいかない未来を、あらかじめ想定しておく。

全部に全力を出すから、肝心なときに崩れる

ここまで書いてきた手順、正直に言います。毎回フルでやると、しんどいです。そして、しんどいと続きません。続かなければ意味がない。

だから、判断の重さで力の入れ方を変えるようにしました。

  • 取り返しのつく小さな決定:直感で即決していい。むしろそうすべき。
  • 取り返しのつかない大きな決定:根拠三つと反証を、ちゃんとやる。

全部に同じエネルギーをかけるから、肝心なときに考え切れない。力を抜く場所を決めることが、考え抜くための準備になる。これが、この一連の学びの中でいちばん地味で、いちばん実用的な気づきでした。

「で、根拠は?」で固まっていたあの頃の自分に、これを渡してあげたいです。今もまだ、完璧にできているわけではありません。でも、根拠を問われたとき、以前より少し長く、言葉が続くようになっています。

まとめ

  • 判断が崩れる原因は、事実・解釈・行動を区別せずに一緒に喋っていること。まず三つを分けるだけで景色が変わる。
  • 解釈は「支持する証拠を集める」より「否定する証拠を探しにいく」順番にすると、精度が上がる。
  • 行動の判断は「やる」で終わらせず、撤退ラインを先に言葉にしておく。動き出す前に決めることが重要。

次にやること

  • 直近の意思決定をひとつ選んで、「事実はどこまでか、解釈はどこからか」を紙に書き分けてみる。
  • 自分の解釈が間違っているとしたら見えるはずの事実を一つ挙げて、それを実際に調べてみる。
  • 次に大きな決断をするとき、始める前に「どうなったら引き返すか」を一行だけ書き残しておく。
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